2020年10月25日日曜日

Super Randonnée 600km Fukushima 【ランドヌール部門 完走】

「ブルベ戦記」 第376話


-------------------

新型コロナウイルス禍に振り回されてきた2020年。
9月から短いブルベシーズンが再開され、数少ない出走機会で年間SR獲得を目指す。


そんな状況下、通常ブルベをこなしつつ、なんとか日程を確保して遠征し、プラスアルファの大きな収穫となったのがSR600 Fukushima(福島)の完走でした。

 Super Randonnée 600km Fukushima


SR600 距離は600km、累積標高10000m以上になる山岳パーマネントコース。
日本国内には13コース(2020年現在)あります。


今回はAR日本橋のコース、制限時間のハードルが高いランドヌール部門で。
参加申し込み後、
まずAR日本橋からブルベカードとフレームプレートが届きました。

これまで悪天候やコース通行止めで自分的にはDNSが続いたSR600。
やっと出走できそうなタイミングが訪れ、あとは天気が心配だったが、
予報は出発日(スタート前日)が近づくにつれ、好転しつつあった。
  
ここには全て書ききれないが、装備も入念に準備。タイヤを新調したり。
ドイツのおばちゃん達にはここ数年、 ほんと世話になりっぱなしだw
 
9月に入って、300km600km、SR600kmと、
3週続けてのブルベとなる。

しかも1週間前の土日の600kmは、完走はしたものの、
途中、房総の雨の山中でスリップ落車し、擦過傷などが脚のあちこちに。
帰宅してから、痛みは無いのになぜか骨折のようにすごく腫れていた。

アキレス腱を痛めた時と似ている。
という具合で、 脚の調子は100%の状態には程遠い。

このまま次の週末、さらにSR600に突入する。
金曜夜の新幹線は予約したが、
このシルバーウィークは無理せず、
脚の「限界」が見えたら、潔くリタイアすることも視野に入れていた。


9/18 それでも出発当日の朝になると、
東北地方の天候は、脚の不調で尻込みしてきた自分を後押しするように、
ますます好転。

この予報をみてまず、泥除けはもっていくのやめることに。
とにかく「軽量こそ正義」が、今回のSR600の自分なりのモットーに。

モチベーションを上げようと、前日までに輪行袋も新調。
これで完全に「やる気」になった。

9/18 出発日の朝になって、コロナ対策ばっちりの近所の整形外科に駆け込み、脚の薬を調達。
腫れはまだ完全に引いていないが、痛みはなく、ペダリングには支障はなさそう。
獲得標高1万メートルのさなかに実際どうなるかは分からないが。


9/18 16:58 最寄り駅から輪行 
東京駅へ。まだ少し残暑。蒸す。



9/18 18:08 JR東京駅
連休前の金曜夕方らしく、 コロナ下にあっても旅行客が目立つようになってきた。

とにかく、採れるうちに走るための栄養を補給(駅弁)。
スタート地の郡山に着いたら、また食べる。
コロナ下で初めて新幹線に乗った
しかも文字通り、上野、大宮を経て、満席に。
両隣に人が座り、心なしか緊張する。











9/18 21:11 あっという間にJR郡山駅 着



駅構内で、明朝スタート前に荷物を預けるコインロッカーの場所を確認しておく。
いろいろと注意書きがあるが、
要は、2日後の午後にゴールしてきて荷物を回収すれば、高くない延長料金を払うだけでOK、ということ。

駅前の観光案内看板。
今回のSR600Fukushimaのコースは、まさに福島県内(と山形県の一部)を駆け巡る。

観光コースは様々だが、自分はスポーツをしに来たのであって、
悠長に観光している時間的、体力的余裕はないだろう。

駅前のホテルに入り、さっそくバイクを組み立て。
暑かった都内から来て、郡山は涼しい。

先週、向かい風でタイムロスして水戸の御老公の湯に1hしか滞在できなかったことを思えば、この夜は翌朝までホテルにゆっくり滞在できる。まさに天国だ。
喫煙室しか部屋が空いてなかったことを除けばw
そこで、ずっと窓を開けっ放しにしていた。
涼しい風が入ってくる。

9/19 6:15 スタートの朝。曇り空だが、予報通り、雨の心配なし。

9/19 7:24 郡山駅西口の駅前(PC1)を8時ジャストにスタートする。
着替えや靴などを入れたリュックを駅のコインロッカーに預けてきた。
これで準備万端。いよいよ、SR600スタート。

9/19 8:00 届け出通りの時間にレシートをゲット。
朝食は済ませていたので、最近よく飲むR-1を買う。

9/19 8:04 ちょうど同じ時刻に出発する参加者がもう1人いた。

この方とはこのあとスタートから途中まで相前後して走り、
後半、福島市を出た先からいわき市までの真っ暗闇の最後の夜間走行でもご一緒することになる。

9/19 8:47 スタートして郡山の市街を郊外へ抜け、安達太良山西側の山沿いに


9/19 9:00 母成グリーンライン。ゆるゆると登り基調。
本格登坂はまだまだこれからだよね、と自らに言い聞かせる。

9/19 9:07 たまたま牛舎が見えたが、ほかに沿道にめぼしいものなし

9/19 9:51 いったん猪苗代町に入る。
が、猪苗代湖を通るのは今日の夕方?以降

9/19 9:53 PC2 母成峠 30.7km
ランドマーク(古戦場跡)を前にフォトチェック

9/19 10:19 最初のピーク・標高約960mの母成峠からいったん少し下り、
またずっと登り区間

9/19 10:35 そして標高1000mを超える。
このまま国道115号の土湯バイパスにはいかず、我らがSR600のコースは、
くねくねと2つ目のピーク、標高1200mの赤湯温泉方面へさらに登る。

なお、このあたりの区間は、
今日これから浄土平まで登ってきて100km過ぎてから延々と下ってきて、
また逆に通過する。

9/19 10:47 標高1000mを超えると、視界が広がってくる。
先行していた参加者の方も、立ち止まっていた。

9/19 10:52

9/19 10:55 2つ目のピーク(分かれ道)まできた。
左側は、今日午後に浄土平からダウンヒルしてくる道。

まずは右手へ。
福島市の西の郊外まで標高1200mから1000mほど一気に下る。

9/19 11:01 日が差してきた。

9/19 11:04 5kmほどの下りを挟んだものの、計40km以上を登ってきて、
今度は20km以上の距離を一気に下る。
カーブも連続し、しかも、かなりの速度が出る。
(下りが苦手な人は大変なんだろうなあ)とつい思ってしまう。

9/19 11:12 あとで画像でみると、日陰の部分も見えるが、
この時は日陰が見えなくて、スピードが出ていることもあり、
散乱する木の枝が怖かった。

9/19 11:38 PC3 義民終えんの地 71.5km
下り終えて、福島市の郊外、あづま総合運動公園の角。

コース沿いは補給用のコンビニが限られる。
手前(68.5km)のセブンイレブンは予習してあったが、
どうもここに寄った記憶がない(レシートも残ってない)。
ここは自販機頼みで、PC3までの直行を優先したはず。

9/19 11:44 このあと、いよいよ県道70号・磐梯吾妻スカイラインで吾妻小富士を抱く浄土平(標高1600m)を目指す。

昨年、ここが土砂崩れで通行止めとなり、出走できなかった因縁の区間だ。

もちろん延々の登りだが、特に序盤にきつい登坂区間(10%以上)があった。
3つ目となるピークまで20km以上。
昼食をピークの浄土平ビジターセンターまで先伸ばしにしたこともあるが、
精神的にどうも撮影するゆとりがなかった。

9/19 12:43 登りの中腹にある高湯温泉。
立ち寄った旅館の売店でようやく水分補給。
ここまでの登りが距離(ふもとから5kmほど)のわりに予想以上の激坂だった。

9/19 13:21


再び標高1000mに。浄土平まであと10kmほどの登り
9/19 13:43 曇り空だが、眺望はいい。


9/19 13:56 浄土平から次々と観光の車が下ってくる。
つづら折りの登坂が続く。

9/19 14:07 お、ついに見えてきた。あれが吾妻小富士か?

9/19 14:14 この日はさほど硫黄臭は強くなかった。
とはいえ、さっさと通過しよう、とばかり、
ついついペダルに力が入る。

もうすぐ標高1500m付近。森林限界を超えて、一気に視界が広がってきた。
このSR600Fukushima、風景上のハイライトは、コース前半に早々と現れる。


9/19 14:17

(もう同じ表現の繰り返しだが)ピークまで延々の登り


9/19 14:19 

9/19 14:24 なんとなく、
ツール・ド・フランスの中継で映し出される、
ガリビエやラルプデュエズと似た風景に思えた。

天上(=浄土平)に駆け上がる道
9/19 14:29 PC4 浄土平 96.8km

9/19 14:31
浄土平ビジターセンターのレストハウスで遅めの昼食です。
坂でハンガーノックにならないように補給してきたのですが、
もう食べないと。

ところで、吾妻小富士の、スカイラインを挟んで反対側にも大穴火口というのがあり、こちらはしっかり白煙が出てました。

9/19 14:38 レストハウス、会津塩ラーメンで休憩

9/19 14:43 コロナ対策徹底の食堂

食後の薬を忘れずに

9/19 15:09 浄土平ビジターセンターを出発。
その先に本当のピークがあり
(写真は標高1600mの路面標示を通過して撮り損ね、
後ろを振り返って撮ったもの。
見送るように吾妻小富士の頂きが小さく見える)、

そこから、また20km以上の長いダウンヒルが始まった。

9/19 15:12

9/19 15:59


9/19 16:02
浄土平(磐梯吾妻スカイライン)から下ってきて、
いったん国道115号(土湯バイパス)に戻り、序盤に通った母成高原の手前で今度は右へ分かれて、県道70号の磐梯吾妻レークラインに入る。


秋元湖、小野川湖の静かな湖畔を巡り、五色沼・裏磐梯の集落まできたが、
国道459号へ右折するT字路の手前で、野猿の群れが県道に。

下ってきて接近するこちらに気づき、
群れはさっと道路から散ったが、
まだ座っていた1匹がいて、
どっちに逃げるかと、こちらはとっさに右にバイクを向けたら、
そいつも右に走る!


とっさにフルブレーキ。
間一髪で衝突を避けたが、
後ろタイヤにフラットスポットが出来てなければいいが、とひやひやだった。

野生動物との「邂逅」は今回、山間部メインのコース特性から十分に予想はしていたが、意外や、集落の入り口で出くわしたのには驚いた。
 

9/19 16:49 五色沼・裏磐梯

ここは五色沼エリアの要所で、セブンイレブンもあるが、
携行食がまだあったし、夕暮れも迫っていたので、そのまま素通り。

ここでちょうど、同じ8時スタートの参加者の男性が前方に見えた。
磐梯吾妻スカイラインの入り口ふもとでコース沿いの店に立ち寄るのが見えたので、こちらが浄土平で昼食の間に先行していたのかもしれない。


集落を出て、国道459号から、猪苗代湖へ向かう県道64号・裏磐梯ゴールドラインへ左折。夕刻になり、また登り区間にさしかかる。

自分は少し疲れが出てきていたので、ペースを緩めていたが、
男性はここは調子がいいらしく、ペースよく坂を登って、すぐに見えなくなった。

9/19 17:39 裏磐梯ゴールドラインで日が暮れてきた。
長い1日目だが、まもなく夜間走行が始まる。

21時ごろに会津若松、さらに23時までに喜多方の宿に着けば、上出来だろう。
その前にまず、猪苗代湖を半周以上しなければならないが。

9/19 17:45 PC5 磐梯山 153.1km
猪苗代湖方面への磐梯吾妻ゴールドラインの下り途中にあるPCスポット。

展望台というか、ちょっとした駐車場のみで、暗くなる前に寄れてよかったが、周りは何もなく、夜なら分かりにくいだろう。
(夜で分かりにくいPCはこのあと、頻出するw)

日が暮れてきたので、ここでライトを付けるなどナイト装備に切り替える。
 

下界に猪苗代湖が見える。これからあそこをぐるっと回る。先は長い。


PC5の後、写真がないが、暗くて撮るものがない、という事情。
猪苗代の平地まで下りてからは、水田の中の1本道を走ったり、
国道49号(越後街道)に出てからも、しばらく平坦な幹線道路を進んだ。



そして18:52には予定通り、176km地点、
国道沿いのセブンイレブン猪苗代志田浜店にて休憩。
R-1ヨーグルトドリンク、つぶあんいりパン、タリーズコーヒーを注入。


そのまま国道49号を進むと、郡山方面に戻ってしまうので、
コースは、湖畔に時計回りに沿うように、県道9号へ右折する。
この先が難所だった。


連休ということもあり、湖畔でバーベキューなどの人もいたが、
人家が途切れると、湖畔とはいえ、真っ暗な山道に突入する。
猪苗代湖が広大なために、会津若松は近いようで遠い。
まして、幹線道路のない南側の湖畔なので、時間がかかる。

そういう中にあって、
PC6の撮影スポットが無事に見つかるか、不安になってきていた。
ガーミンの距離測定は概ね正確だったが、数百メートル単位は怪しい。
今回は、PCがいつものコンビニなどではなく、ただの石碑だったりするわけで、
真っ暗な道では見過ごしかねない。
(そろそろかな)と思ったら、停まって地図を確認したり。


9/19 19:42 PC6  猪苗代湖 湖雲山洞泉寺 188.5km

ここに着く数百メートル手前の集落を通過したあたりから探し始め、
スマホの現在地情報とつきあわせながら、まさに暗闇の中で「発見」した次第。

9/19 19:58

せっかく猪苗代湖を走っているのだから、とシャッターを切るが、
暗すぎて絵にならない。

そのうちにちょうど200km過ぎたあたりから、やっと湖畔を離れ、
コースは会津若松へと向かう。

だが、国道49号は通らず、
最短距離をたどるべく、背炙山(せあぶりやま)という、あまり夜間にひとりでは通りたくはないような山間部を抜けるコースになっている。
勾配は5~10%で、ほぼ林道に近い。
通過する車両は夜間は、ほぼゼロに近い。
夜空を見上げると、遠くが街明かりを反射してほんのり明るいので、会津若松の街が近いのは分かるのだが、
実際、市街地まで15km近く、この険難な山道を越えないとならない。



あくまでスポーツ、アドベンチャーとしてブルベ、SR600に挑んでいるのだけど、
さすがにこのときは、あまりの暗い山道に、心細くなった。



さらに、(もしクマが道に出てきたら、登っている坂のどっちに逃げればいいのだろう)という迷いも打ち消しがたかった。
下って逃げれば、確実なのだろうが、
せっかく稼いできた登りの距離を失いたくない。
しかし、登って逃げるにしては、道は逃げ場がなく狭いし、激坂すぎる。




結論が出ないまま、真っ暗な山の中でひとり、登坂を続けていた。
一度だったか、右手の土手の茂みでガサガサと大きな音が!

仕方なく、熊除けになるかも、と、ベルをチンチン鳴らしながら進んだ。

唯一の頼りは、昨年のPBP2019が初舞台だった新鋭ライト、G-VOLT70だった。
今回も3灯持参したが、2灯のビーム光が漆黒の闇を白く明るく切り開いてくれる。



そんな修行のような10数km区間を走り、
いくつものピークを越えて、
最後に急なつづら折りを標高500m分ほど下った先、
会津若松市街の明かりが目の前に開けた時の、その安堵感といったら。

あとから振り返ると、
このSR600の心理的な負荷クライマックスはこの区間だった。

9/19 21:51 PC7 会津若松 鶴ケ城 227km

もう夜遅くなっていたので、城の照明も消えていたためか、
撮影用に指定されている自転車乗り入れ禁止案内の看板が、暗くて見つけられず。
付近をいったりきたり、というのはまあ、背炙山の修行に比べたら余興だった
(コースをいったりきたりすると、ガーミンの距離測定が合わなくなってくるので、避けたいところではあったが)。

城の案内看板のほうはようやく見つかったので、それで撮影しておく。

9/19 22:00 会津若松市街

見通しより1時間ほど遅れた感じだが、
宿を予約している喜多方まではあと20kmほど。

平坦やや下りのリエゾン区間のようなものなので、
ゆっくり流していく。
それで予定通り、23時までには着けそうだ。

9/19 22:57 喜多方 248.9km

町に入ったあたりの、ローソンで夜食(サラダチキンプレーン2個、カップ麺)、朝食(ミックスサンド、トマトジュースほか)などを買い込んでから、
予約した市中の「笹屋旅館」へ。
遅い到着の客だが、宿のおばさんが温かく迎えてくれた。


和式なのでバイクは部屋には持ち込めないが、玄関内に置かせてくれた。ほかにも2台ロードバイクが置いてあったが、SR600参加者かどうかは分からない。


時間を過ぎていたが、浴場も入れさせてもらった。
湯船に浸かった時の幸せ感といったら。

喜多方ラーメンを食べに出ることは時間的に無理だったが、
まあ、こうして翌朝まで休めるから御の字。

実際、ゆっくりと睡眠をとることができたのは2日目に向けて大きかった。

9/20 6:41 2日目、喜多方の朝。笹屋旅館にて。
またいずれかの機会に、ゆっくりと訪れたい宿。

さて、SR600Fukushima 2日目が始まった。

9/20 6:46 連休の日曜朝、静かな喜多方市街から

9/20 6:51 PC8 喜多方 出雲神社 248.9km

コース沿いの宿からすぐ1kmほど先に、次のPCスポット

9/20 7:38 今日は標高1000m超の県境、そして山形県内を通る。
喜多方の近郊から、さっそく登りが始まる。

9/20 8:08 初日からずっとこのあたり、磐梯朝日国立公園のいくつかの湖の周辺の山々を登ったり下りたりしてきたことになる。

2日目はまず、喜多方から標高800m超の取上峠まで、600mほどを登る。
続いて、前日もかすめた桧原湖の裏磐梯高原の、
対岸、ほぼ平坦な湖畔を10kmほど抜けて、
さらに標高1400mの白布峠へと駆け上がる。
計47kmほどの、2段構えのピークだ。

白布峠で県境を越すと、
残りのコース後半にはもう1000m級の山はない。
しかし、山形県内に「えげつない坂」があるのを事前のネット情報で知っていたので、心理的にはまだ張り詰めたものがあった。

9/20 8:25 まずは取上峠。直登がメインで、
いつまでたっても変わらない前方視界。中盤で10%を超す区間がある。

9/20 8:47 桧原湖 天気はどんよりしているが、
湖畔の湿地帯では、釣りをしているのか、人がちらほらいる。


9/20 8:53 ここで左折し、磐梯から山形方面へ、白布峠(西吾妻スカイバレー)へ向かう

9/20 9:57 PC9 白布峠 289.8km
 5~10%坂が8kmほど続いた。
天候が曇りなせいか、あまり下界の景色に驚くようなこともなく、
淡々とひとりでヒルクライムを続けている。

ただ、ここに至るまでの峠の登りでは日曜朝のオートバイのローリング・グループに何度も抜かれた。
が、一度、山の上のほうで急ブレーキのスリップ音と激しい衝突音が響き、
こちらがそこまで登って通過してみると、
対向車との衝突事故が起きてしまっている現場にも遭遇した。

山の下からはもう、かすかに救急車のサイレンも聞こえてきている。
(やっぱりオートバイは危ないんだな。交通安全第一だ)
そう実感せざるを得なかった。



県境の白布峠を越えると、山形県米沢市まで標高差1200m以上、
距離20km以上のまさにダウンヒルだった。
リムやフォーク、フレームの剛性を試されているのでは、
と思うほどの高速ダウンヒル。


そしてひさびさの市街地に入ると、信号峠が。車の交通量が多い。

9/20 10:49 PC10 米沢市街 「懸工発祥の地」の石碑 315.4km

市街地の真ん中に丘のような芝生地の公園があり、のどかな雰囲気。


朝に喜多方を出て以来、米沢までコンビニが皆無だったので、
事前に決めていたコース沿い、318kmあたりのコンビニ
(ファミリーマート米沢万世町片子店)で、いったん大休憩とする。
(どん兵衛特盛天そば、タリーズブラック)

9/20 11:40 コンビニを出て、そのまま県道を直進したら、ミスコース。
旧道が左に枝分かれしている箇所に気づかなかった。

そこまでいったん戻ってから、バイパス状の県道の下を右にくぐる。
風景が、市街地から急にだだっ広い水田に変わった。
稲刈りのシーズンがそろそろ、のようだった。
前方に低い山地が見えてくる。
       (あそこへ分け入るんだな、どんな道だろう)
9/20 11:51 米沢盆地の南端、福島県境への山並みがまた迫ってくる。

9/20 12:01 コースの県道は、山形新幹線と羽黒川に寄り添うように山間へ。
次のピークは標高差は400mほどだが、たっぷり20kmはある。

昼間なので山林に入ってものどかさを感じるが、
(これがまた夜間だったりすると、おそらく真っ暗な、心細い区間に様変わりするのかな)などと想像したりしながら、緩めの細い坂道をゆく。

ちょうど新幹線車両が通り過ぎる。スピード感が全くない。
新幹線なのに、在来線、例えば中央線の特急のような。

よく考えてみると、在来線型の新幹線区間を間近に見るのは初めてかも。


9/20 12:51 10%のダート坂にて決死の撮影 

鉄道沿いなので、さほどの坂には思っていなかったが、
県道なのに、だんだん道幅が林道のように狭くなり、そして路面がダート化して、勾配が益してきた。

ダートは大きな凹凸に砂利も混在してきて、
それで勾配は10%となり、後輪が砂利で滑り、
もはや走行姿勢を保つのが難しくなってきた。
立ちごけしたくなかったので、ついに押しに。

ピークまでの距離をみると2kmぐらい。
(2kmぐらい、もう一気に越えたいなあ)と思うも、
シッティングに戻ってこぎ出しても、凸凹でハンドリングが保てなくて危ない。
すぐにまた押しに戻る。
しかも10%だから、押しが疲れる。

(これ、ほんとに県道か?ほんと酷い道だわ)を心の中で何度も繰り返す。

 

9/20 13:24 PC11 JR峠駅 339.1km

とはいえ、酷い道は2kmほどだったので、ピークは無事すぐ越えた。
しかし、PC11に指定された峠駅は、県道からさらに入った奥地にあり、
折り返しまでのアップダウンもしっかりあった。

JR奥羽本線でわりと有名な駅だし、鉄ちゃんの自分だが、
この時は長居もせず、なぜか感慨薄だった。
この時はブルベライダーとして、このSR600を完遂することだけに集中していたようだ。

折り返しの峠駅から県道に戻り、今度はまた下りが始まるが、
序盤はこれまたとんでもない悪路というか、工事中の道で、
あまりのひどさに申し訳ないと思ったのか、道の両脇に鉄板が敷いてある。

この鉄板の上を走れば、と思いがちだが、鉄板の継ぎ目の凹凸が大きくて危ないほか、鉄板の上も、下りでスピードが出るとスリップが怖い。
(なんだよこれ、なんだよこれ)と愚痴りながら、
用心のブレーキかけながらの下りとなる。

その工事中の区間を抜けると、国道13号に合流して県境を過ぎ、福島県に戻った。
さらに福島市街までの10kmほどのダウンヒル。


9/20 14:52 福島市街

遅い午後の日差しがやけに暑い。
一連の山の区間が終わり、
なんとなく気が抜けてきた。どこかで少し休みたい。

と思ったが、コース沿いにコンビニが見当たらないまま、福島駅前の周辺を抜ける。なかなか、すっと寄れるコンビニが沿道にない。
(どこかにコンビニないか)と信号待ちの交差点で右をみたら、コースと交差する通り沿いに、なじみの看板がちらっと見えた。

西日が強まってきた15時過ぎ、ファミリーマート福島北裡通店に寄る。
(どら焼き2個、ピルクル)





ここまで370km。いつものBRMと違い、やはりコース標高もあり、
経過時間(約31時間)のわりには距離が伸びていない。

これから130km先、最後の夜の宿泊地いわき(500km)を目指す。
福島市の中心部を出て、丘陵地帯の郊外へ。
最初は郊外住宅地の幹線道路、意外としんどいアップダウン、
やがて道をいくつか曲がって、だんだん農村風景に。




夕方になってきて、
阿武隈川をかすめつつ、農家が点在する丘陵地帯をさらに進む。

途中で自販機休憩したり、17時過ぎには、国道349号沿いでコンビニを見つけ、立ち寄って、ついにレッドブルを投入。
(セブンイレブン福島東和町店)
地名は二本松市だが、遥かに東に位置する丘陵地帯、
景色は変わらず、農村地域。

その後、399kmでは通行止めによるコース迂回を失念し、
道を左折してしまい、途中で気づいて引き返す場面も。
そのたびに、頭の中で距離追加による補正計算をしないとならなかった。




こうして2日目も日が暮れた。ライトを付けて走る。
たまに小さな集落があるぐらいで、道は真っ暗になってきた。

とっぷり暮れて雑木林の中、小さなアップダウンが繰り返されるが、
なんだかもう、感情の抑揚もなく、良くも悪くも慣れきってしまった。

夜闇にバックライトが頼もしいガーミンの距離表示ばかりが気になる。





19時過ぎに、曲がり角にコンビニのある集落に入った。
(ファミリーマート田村都路店)

ちょうど店に入ると、イートインに、同じ8時スタートだった参加者の方がいた。
1日目の五色沼・裏磐梯で見かけて以来。

ここで初めて挨拶を交わし、
ここまでの道のりの「とんでもなさ」を語り合ったw
またヨーグルトドリンクR-1、どら焼き2個、ゼリーエネルギーを飲み込む。


このあと店を出て、なんとなくこの方に同行する形に。
この先、どうせまた真っ暗な山道、
ソロよりも近くに誰かいるほうが心細くない、と思いながら、
その先は付かず離れずで進んだ。

9/20 19:24 PC12 都路郵便局 430.4km

ほんとに夜は真っ暗で、注意して探さないと、PCの場所が分からないほど。

9/20 20:30 最終日にいわきからの終盤コースとも交差する川内村を過ぎ、
JR磐越東線の小野新町駅を目指す。

道路灯もなく、夜闇が続くが、
時折、道が写真のようにバイパスのように広く新しくなったり、
山あいをまたぐ大きな高架橋を通ったりする。
だが、往来する車はなく、静けさのみ。
(どうしてこんな立派な道路が出来てるのだろう)
そう感じさせるほど。

9/20 21:13 PC13 JR小野新町駅 465.0km

小さな駅舎の蛍光灯でさえまぶしい、と感じる。

このPCに着く手前、左折した交差点の右奥には
アミューズメントセンター「リカちゃんキャッスル」があったのだけど、
夜だったこともあり、全く気づかなかった。
(実は、20年以上前に一度、出張で訪れたことがあるのだけど)

さて、いわきまではあと35kmまできた。
この夜も23時ごろに着けば、ゆっくり休めるはずだが、
(この夜闇の先に、いわきの街がほんとにあるのか)と思わせるほど、
小野新町の駅前広場は静まりかえっていた。





ここから海寄りのいわき市までは、
磐越東線と夏井川の渓谷沿いの県道41号で、
標高差500m近くの下り基調のコースだった。
速度は上がるが、真っ暗でカーブが多いので、ライトは2つとも点灯する。
もう、この最後の夜でライトの出番は終わり。
使い切ってしまって大丈夫。

疲れはさほど感じず、眠くも無い。
だが、(いつになったら着くんだろう)と気は遠くなる。




寄り添うように続く磐越東線と踏切で何度か交差し、
漆黒の渓谷に響き渡る夏井川の流れを右手に感じつつ、ひたすら下り続ける。

延々と下ってくると、
徐々に道沿いに人家が現れるようになり、
ようやく道が平坦になってきて、いわき市内の住宅地に入った。



9/20 22:56 
いわきの駅近くまできて、別のホテルに向かう参加者の方に挨拶して分かれて、
自分も予約したホテルにたどり着いた
。ちょうど500km弱。

だいぶ完走のめどが立ってきた。
脚もなんとかもっているようで、やや安堵する。

9/21 0:18 
シャワーは入った。あとは食べてから寝ないと。

9/21 6:18 3日目最終日の朝、起きた。

9/21 6:38 さあ、朝食だ♪

バイキングは感染防止で休止中なれど、
メニューさすが、藤田観光ワシントンホテル(目玉焼き2個@@)

9/21 7:19 気持ちも軽く、出発。

9/21 7:21 PC14 いわき市 天照皇大神宮 507.1km 

市中心部近くのホテルを出てすぐ。
初めてお見かけする参加者が1人、先に撮影していた。
軽く挨拶して、あとから撮影。

さて郡山駅ゴールまで、あと100km
午後には着ける見通しに。

9/21 7:33

9/21 7:54

9/21 8:52 とはいえ、激坂はまだ続く。

9/21 9:17

9/21 9:36

9/21 10:05 PC15 川内 あぶくまロマンチック街道 石標 551.1km
ゴールまであと50kmちょっと。

9/21 10:47 最後のピークを越える前に、
のどかな風景の中にある商店に寄る。ベンチでひと休憩。

9/21 11:11 これが最後のピークか。
郡山が近づくにつれ、もう長~い坂はなくなってきた。ホッとする。

9/21 12:02 磐越自動車道をくぐる。集落が増えてきた。

気がつくと、今回のSR600であまり恵まれなかった陽光がここにきて。
とにかく、雨がなくて幸いだった。


9/21 12:17 これが実質、最後の坂かな~?

9/21 12:30 PC16 三春滝桜 石標 590.6km
ゴールの郡山駅まであと、たった13.5km


9/21 12:35 郡山市近郊のさくらの公園近く。美しい小道をゆく

さくら湖

9/21 12:51 青空が気持ちいい。

9/21 13:00 美術館通り、というおしゃれな名前の通りに

郡山の市街が見えてきた!

9/21 13:09

JR郡山駅前に戻ってきました~

駅前のローソンへ

9/21 13:13 SR600福島  無事ゴール!!!!!


9/21 13:16 600kmの過酷なクライム&ダウンヒル
獲得標高1万m以上、53時間余りの旅でした。

今回もノートラブルでよく走ったぞ。我がCANYON ENDURACE
無事これ名馬。


9/21 13:53 輪行支度

9/21 14:38 帰りの新幹線まで少し時間あるので、ゆっくり昼食


9/21 15:03

9/21 15:23 さあ、帰ろう。

完走申請だん。 53h13mでした。